RPM演奏曲メモ

トヴェイト:ハルダンゲルの50の旋律

  • 1. 謹んでお迎えを ――隣人を迎えてのパーティーで歌われていた歓迎の歌とのこと。「謹んでお迎えを。ここには神の平安がある……」
  • 2. 笛の音 ――複調的な響きはトヴェイトの常套手段なのですが、笛の音色を5度堆積で表すところには、個人的に伊福部の日本組曲も想起。ちなみに、オーケストラ版の「ハルダンゲルの100の旋律」でも、第1組曲の1,2番はこの「謹んでお迎えを」から「笛の音」という流れ。トヴェイトの中に、幕開けの2曲としてはっきりイメージがあったのでは。
  • 3. 口説き ――楽しい曲。「〇〇(その場で人の名を当てはめて歌うらしい)がプロポーズしたとき、ひょんなことから……」
  • 9. この世で最も美しい歌 ――大事な人にはこの世で最も美しい歌を歌ってあげたいのに……ロマンチックですね!
  • 12. 自慢屋のバラード ――スケルツァンドの指示。自惚れ屋を揶揄するような感じ。「俺は独身で、この結婚式のパーティーいち踊りがうまい!」
  • 15. ハルダンゲルフィドルの歌 ――ハルダンゲルフィドルは検索すれば動画など出てきますが、共鳴弦が追加で張られたヴァイオリンといった趣の独特で美しい楽器。その音を想像しつつ……。
  • 19. 告別 ――「一緒に歌ったこの歌を、いま私は独り歌う……」愛する人を送る歌。トヴェイト、わざわざ注記で(出版譜にですよ?)「自分のつけたハーモニーは、この歌の強力な精神性を引き出せていないと思う」とか書いていて、すごく謙虚だし正直だしで生きづらそう。そういうとこ好きですね。そんなことないよ、伝わってるよ、と言いたい。
  • 30. 髭の中の炎 ――おもしろおかしい歌、ジョコーソの指示。パイプを落っことしたら髭に火がついて、藁の山みたいに燃え上がった、そして顎がツルツルに……。
  • 35. 妖精の丘 ――この歌をトヴェイトに教えた人は、実際に妖精が丘で遊んだり歌ったりしているのを何度も目撃したそうです。
  • 38. この子の父 ――タイトルは幸せそうなんですけど、「婚外子」テーマなので暗くねじれた響きになっている様子。いまよりずっと狭い世の中、隣人たちのスキャンダルというのは何より大きなネタだったのでしょう。
  • 44. 曽祖父のメロディー ――どんな内容の歌も(喜びも悲しみも)ぜんぶ同じ旋律にのせて歌っちゃう名人がいたそうで。それがこんなふうだった、ということのようです。
  • 50. 自家醸造ビール ――伴奏部分には「ランゲレイク(ツィターみたいな楽器)のように」の指示。ハルダンゲルでたいへんよく知られた、飲めや歌えのパーティーソングのようです。

浜渦正志:練習曲

  • 1. C-Dur “Die Glocke” ――初演のベンヤミン・ヌスの演奏をきいて「鐘を打ち鳴らしているよう」だと感じ、この副題を追加したそう。連打のかっこよさ、爽快感。
  • 4. C-Dur ――カプリチオーソの指示。「手応えと温もりを感じているのに、何故か言葉で言い表せない、手に負えないようなところもある」とのこと。気まぐれな感じが猫っぽい、かも。
  • 5. C-Dur ――浜渦さんご自身もお気に入りだそう。音の遊び、実験、という印象が強い。アルペッジョ後の音の伸び方の変化がおもしろポイントのひとつかな、と個人的には思っています。
  • 6. d-moll “Blank” ――12曲中唯一、テーマ先行で作られた曲とのこと。練習曲としてはコントロールとペダリングが肝要でしょうか。悲しみの果ての空虚……感情をどこまで出すかの塩梅が難しい。
  • 8. g-moll ――冒頭に「電子機器みたいに」との指示。クラシックだとタイトルはついてなくても通称として「電子機器」とか勝手に呼ばれて定着していくパターンですね。どれだけ普通のピアノじゃない音として聴かせられるかの勝負。
  • 11. Es-Dur ――冗談音楽っぽい。古典派から現代曲までの要素を詰め込みつつコントみたいに仕上げてある、という感じでしょうか。目覚まし時計のベルで冒頭に戻る、みたいな演出が楽しい。
  • 12. Des-Dur ――くるくる変わる和音を連打し続ける、愉快で劇的な曲。ここまでちゃんと弾けたならやりたい放題やってもいいよ、と曲集の最後になって作曲者からお許しが出た、みたいな開放感があります。

平尾貴四男:ピアノのためのソナタ(1951年改訂版)

内容に関しては作曲者本人の各楽章の標題(紹介動画でも出していただけると思います)がよく説明してくれているのでそれとして、「改訂版」について。

いきなり1ページ目から明らかなミスがあったりするので実はあんまり信頼性は高くなさそうで、初版と見比べて自分で判断したほうが良い。個人的には初版も改訂版も間違ったままの箇所もあるような気が……します。小節を足したり削ったりしてある部分はすべて改訂版にならって演奏します。

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